私は即行で花瓶を取ってきた。

白く背の高い花瓶の中には凛とした向日葵が飾られた。

花瓶は窓際に置くようにした。日光が当たりやすいように。

明るい向日葵の下に、対照的な雪村さんの体があった。


殺風景な部屋に雪村さん。雪村さんはどこか冷たいような雰囲気を持っている人だった。

色でたとえると、ブルー。

今まで暖かさというものが存在しなかったような部屋が、向日葵のおかげで一気に明るくなったような気がした。


「ね、樹!綺麗でしょ!」

「は?知らねぇよ。ってか、そんなトコ置いても俺からは見えねぇから」


確かに、窓に背を向けた状態でベッドは配置してあるので、雪村さんは振り返らない限り向日葵を見ることができない。


「だって、そこが一番お日様が当たるとこなんだから、しょうがないじゃん」

「・・・お前いくつだよ」


雪村さんは顔をしかめて、気持ち悪ぃ、と呟いた。


佐上さんが『お日様』と言ったことに違和感を感じたらしい。


確かに佐上さんは28歳の成人男性だから、そうやって言うのはちょっとおかしいかもしれない。

しかし私は佐上さんの言葉に違和感を感じたことなんてなかった。

今までにも、普通の成人男性は使わないような幼い単語が何度か出てきたことがあったが、佐上さんが言うと、まるで変ではなかった。



佐上さんは可愛い人だ。



私は時々彼に釘付けになってしまうときがある。