患者さんの脳には軽い内出血以外に目立った異常は無かった。


これくらいなら数時間後に目が覚めるだろうとつきそいの人たちに言ったところ、皆安堵のため息をついて床にへたり込んだ。


「よかった・・・ホントに・・・」


長身の男の人はずっと固くしていた表情をようやく緩めて微笑んでいた。


しかし今度は小柄な男の人が安心のせいか涙をぽろぽろと流しだしてしまった。


「晴・・・」


今度は逆に長身の人が小柄な人の頭をくしゃくしゃ撫でて慰めてる。

こうして見ると身長差もあるし・・・なんだか親子みたいだ。



「あの、僕たち樹の目が覚めるまで一緒にいてもいいですか?」


金髪の男の人が聞いた。やっぱりこの人はしっかり者みたいだ。


「えぇ、構いませんよ。患者さんには個室の方をご用意させて頂いておりますので・・・」

「あ・・・わざわざすみません・・・」

「いいえ、丁度深夜ですし、いきなり大部屋の準備はできませんので、構いませんよ」

「ありがとうございます」


金髪の男の人がニコリと微笑むと他の人たちもペコっと頭を下げてお礼を言ってくる。礼儀正しい人たちだ。


「あの、私たちはこの辺で・・・」


スタッフらしき人たちは申し訳なさそうに頭を下げた。


「まだ片付けと報告が残っていますので」

「あ、はい。樹には僕たちがついてるんで、大丈夫です。本当にご迷惑をかけてしまってすみませんでした」

「いえ、本当に・・・こんなことになってしまうなんて。脳に異常が無くて不幸中の幸いでした」

「はい・・・皆さんが早急に手配してくださったからです、本当にありがとうございました」


3人がスタッフに向かって深々と頭を下げる。


スタッフもそれに対して深々とお辞儀して院内を去っていった。



「お部屋はこちらです」