病院は慌てて『SHANGRI-LA』を知らない看護師を探した。そうしなければ雪村さんはまたヒステリックになりかねないからだ。

そして『SHANGRI-LA』を知らない看護師は私しかいなかった。婦長は昨日の会話で、私しかいないと考えたのだ。




「本当は、あと数人はいると思ったんだけど・・・本当に佐々木さんしかいないみたいなの」

「そうですか・・・」

「それで、なんだけど・・・佐々木さん一人しかいないわけだから、ずっと雪村さんについていてほしいんだけど・・・」

「・・・はい?」


「だから、多分、雪村さんは佐々木さんみたいな人以外の人が来るとまたヒステリックになっちゃうと思うの。隠したって絶対態度に出ちゃうじゃない?鈴木さんもガチガチだったみたいだし・・・。だから、雪村さんのことをずっと見ていてほしいのよ」

「・・・え?私の週休二日は・・・?」

「・・・ごめんなさいね」




つまり私は24時間毎日雪村さんのお傍で面倒を見なければならないらしい。


明らかに労働基準法違反だ。



「でもね、雪村さんが休んでる時は佐々木さんも休んでいいんだし・・・ホラ、何より他の患者さんは見なくていいんだから」


「そうですけど・・・」

「じゃぁ、お願いね。本当に、佐々木さんしかいないのよ」


深々とお辞儀をする婦長。

婦長にここまでやられたら、断ることもできなくなってしまった。



そして何より、雪村さんの記憶を治す手助けをすると、先ほど言ってしまったから・・・。





「・・・わかりました」



私は承諾した。