「俺は、信じます。樹はきっと、自分のことも、俺たちのことも、『SHANGRI-LA』のことだって、ちゃんと思い出してくれるって、信じてます」







清々しい言葉だった。


『信じてます』






「看護師さん、俺も、晴が言うとおり、信じてます」

「僕も、信じてます」



志田さんと萩野さんも微笑んでそう言った。




私は恥ずかしくなった。




患者さんを『信じる』ことができなければ、適切なケアをすることなんてできるはずないのに。

私は忘れていたみたいだった。一番大切なことを。


そして間違っていた。この人たちは、絶望なんてしていなかった。

悪い方のことなんて考えてなかった。


この人たちはきっと、強い強い絆で結ばれているんだ。じゃなかったら、微笑んでそんなこと言えるはず無い。そう思った。





「・・・うっ・・・うぅうっ・・・」


鈴木さんはついに堪えきれなくなって泣いてしまった。


でもそれは悲しみの涙ではないことは、私も3人もちゃんと分かっていた。





「私も信じます。雪村さんは絶対に記憶を取り戻して、今までと変わりなく過ごしていけるって・・・・そう思います」


「わ、わた・・・私、もっ・・・」



さっきまでの暗い空気はどこかへ消えうせて、カーテンから柔らかな日差しが差し込み、もうすっかり太陽は昇っていたのだった。