それを告げるのが死ぬほど辛かった。

できれば、嘘でもいいから、明日治ると言ってしまいたかった。

私は人に絶望を与えるために看護師になったんじゃないのに、私は今3人に絶望を与えた。



鈴木さんは必死で涙を堪えているようだった。付添い人がいる前で看護師が泣くなんて言語道断だということは鈴木さんもしっかり自覚しているらしい。

唇が白くなるまで噛んで、手のひらに爪が食い込むほど拳を握った。


3人は、しん、と黙っていた。




私の言葉はどれだけ3人を傷つけただろうか。



私は悔しさでいっぱいになった。どうして医療機関でありながら確実に記憶を取り戻させることができないのだろう。

どうして自然にまかせ、神に全てをゆだねることしかできないのだろう。


私は情けなくなる。



今まで私が積み重ねてきたことが、全て無駄なように思えてきた。

だって、患者さん一人まともに治してあげることができないのだから。







「・・・・・・俺」


沈黙を破ったのは佐上さんだった。



佐上さんはパイプ椅子から立ち上がって、意外にも微笑んだのだった。