「お聞きしたいことがいくつかあります。雪村さんのこれからの治療について必要な資料となりますのでご協力下さい」



私がそう言うと3人は無言で頷いた。


本当は相当なショックを受けているであろう今、そんなこと言わせたくない。

でもこれからの治療方針を決める大切な資料であるし、雪村さんのことを私たち看護師がよく知っていなければならないのは当然である。



「雪村さんと最初に出会ったときのことを思い出していただきたいのですが・・・」



「えっと・・・俺たちは皆生まれ育った場所も皆バラバラなんです。皆音楽を本気でやりたくて上京した後に出会ったんです。最初に俺と晴が出会って、二人でバンドを組んだんです、他のメンバーは結構ころころ変わっていったんですけど・・・でも、樹に会って俺たちはすぐに樹をバンドに誘いました。樹はギターの腕も申し分なかったし、『SHANGRI-LA』のギターは樹しかいないって思いました。それから間もなく信二も加わって、今の形になったんです。確か出会ったのは・・・皆高校を卒業して上京してきたから、18か19の頃でした」


志田さんがゆっくりと話し出す。

私は必要なところを拾ってカルテに書き込んでいく。

鈴木さんはとにかく一生懸命聞いている。


「以前の雪村さんの性格はどうでしたか?」


「最初は最悪でしたよ。クールぶってたのか悪ぶってたのか・・・とにかく無愛想で嫌味は言うし、よくキレてたし・・・。でも、一緒に過ごすうちに、嫌味なだけじゃないって分かったんです。樹は自分の殻に閉じこもってただけだったから、本当の樹を見せてくれた時、俺たちは本当に嬉しかったんです。そんな樹見れたの、出会ってから1年以上経ってからなんですけどね」