雪村さんがCTスキャンを受けている間、私はナースステーションに戻った。


案の定、鈴木さんはそこにいた。



「鈴木さん!」



私が呼ぶと鈴木さんは泣きそうな顔してこちらに走ってきた。

私の前で立ち止まって、顔を俯かせて、言う。



「・・・HARUさんとKYOHEYさんに聞いたの・・・ITSUKIさん、記憶喪失だって・・・」


「今、もう一回検査受けてるから、まだそうと決まったわけじゃないよ」


とは言ったものの、ほとんどその通りだった。



「私、『SHANGRI-LA』の中では、ITSUKIさんが一番好きだったの・・・もう、ITSUKIさんのギタープレイ、見れないのかな・・・もう、ITSUKIさんの記憶戻らないのかな・・・」



私は先ほどのことを思い出した。


車椅子で雪村さんを運んでいる時に、一度大きな鏡の前を通ったのだ。

その時雪村さんは驚愕して車椅子から身を乗り出して鏡をじっくりと見た。



「俺・・・いつの間にこんなに老けたんだ・・・?」



雪村さんはそう言ったのだった。




「鈴木さん、看護師がそんな弱音吐いてどうするのよ。・・・とにかく、今は結果を待ちましょ」


私はできるだけ悪い方向に考えないようにした。