再検査のため、すぐに雪村さんを検査室につれていく。


足を骨折しているので、車椅子に乗せて、私がそれを押して行っている。



雪村さんは、私に何故自分がここにいるのか、自分は誰なのかを聞いてきたが、私は答えることができなかった。

最初、彼は冷静に見えた。しかしそれはおそらく強がりだったに違いない。

私が何も言わないでいると雪村さんは少しだけ不安そうな顔をした。

当たり前だと思う。

自分が誰なのか、なぜ自分がここにいるのか、わからないのだから。

私はなんて言えばいいのが全くわからなかった。しかし、眉間に皺を寄せて口を固く結んでいる雪村さんを見ると、何か言わなければいけない気になる。






「・・・大丈夫、ですから」




そんな言葉しか見つからない自分に恥じた。4年もやっていて、どうしてこんな簡単な言葉しかでてこないんだろう。



それでも雪村さんは、少しだけ楽になったようだった。