「あの・・・ちょっと、いいですか?」

「え?でも・・・」


私はベッドの方を見る。

ベッドの上には体を起こした雪村さんがいた。



「雪村さん、ご気分はどうですか?」



私がそう尋ねると、雪村さんは鋭い目で私を睨んだ。



「・・・ていうか、何で俺病院にいんだよ?目覚めたら薬臭いところに寝かされてるし、知らねぇやつらがごちゃごちゃうるせーし、最悪」

「え?」



私は思わず金髪の男性を見た。

彼は私に暗い視線を向けて、コクリと頷いた。その目は私に全てを理解させるのに、十分だった。


雪村さんは、事故のことを覚えていないのだ、いや、それだけなら、よくあることだ。

『知らねぇやつら』というのは、他の患者さんの事ではない。ここは個室だから、雪村さん以外の患者さんは、ここにはいない。


つまり、だから・・・



「すみません、ちょっと来てください」



今度は逆に私が金髪の男性の腕を掴み、待合室に移動した。