でも、だから曲を聴こうとか、そういう感情は芽生えてこない。


私には邦楽に対する免疫がガッツリついてしまったようだ。この免疫はちょっとやそっとじゃ崩れることは無いだろう。

それに、ファンであるとかないとか・・・それ以前に私たちは看護師と患者の関係であるわけだから、何もそこは無理してあわせる必要もないだろうと思っている。


私は多分、これから先も彼らのことを深く知ることはないだろう。そして必要以上に関わることも、きっとない。


患者さんは、脳よりも骨折の方が酷かった。しかし、その骨折も絶望的なものではなく、ここに入院している多くの患者さんと比べたら軽い方なのだ。

通常骨折した患者さんと私たち看護師は、そんなに接点が無い。それもそうだろう。ギプスを巻いたら後は安静だけが必要なのだから。

関わるのはせいぜい朝の問診、食事の供給、夜の見回り、そんなところだ。


きっとあれぐらいの骨折ならばすぐに退院できるだろう。きっと何事も無く、退院するだろう。



だからきっと、私は変わらないと思う。





そんなことを、眠い頭で考えていたら、ナースコールが喧しく鳴り響いた。










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患者さんの名前は、『雪村 樹』といった。

先ほど、意識が戻った、と連絡が入った。

私にはそのつきそい人の声が暗く沈んでいたように聞こえて、疑問に感じた。

あんなに心配していたのだから、意識が回復したら普通喜ぶものなのではないだろうか?

そんなことが頭を過ぎったが、とりあえず私と鈴木さんは雪村さんの部屋に向かうことにした。

鈴木さんの顔はニヤけていた。