「要、空気読んでよ」
「読めない」

「そうか。じゃあ、死ぬ気で読んでもらおうか?」

要の胸ぐらを掴んで、壁に追い詰めた。覚悟しろよ?
大丈夫だ。多分、生きてられるか分からないけどね。

「読む、読めます!」
必死に頷きながら、自分の手を握ってきた。
…あ。手で思い出した。溝川に連絡しなきゃ。
色々と世話になったしね。しかも、パーティーあるから手伝ってって言われたんだっけ。
携帯を見ると、溝川からメールが。

《どうしたの?》

やっば…何通もあった。早く連絡しないと。

《すみません。ちょっと事情があって。それと、離婚はしません》

よし、OKっと。連絡終わり。
携帯をポケットにしまって、平次の手を握った。

「誰に?」

「溝川。色々とお世話になったから」

家を出てった後の話もした。溝川宅に行ったのも、溝川に言われたことも。

黙って聞いてくれていたけど、きっと傷ついてるよね。
平次のこと最低だって思ってたけど、1番最低なのは自分だった。
最低なことをされたから、自分も最低なことをしたっていう馬鹿な考え。

「ごめん…」

「僕が悪かったんだ。浮気して…ごめん。それと、信じてあげられなくてごめん」

いいや。信じてもらうには、まず自分を知ってもらわなきゃ。何年一緒にいても、分からないことは沢山ある。
なのに、それに気づけなかった自分が謝るべきだよ。

「平次は悪くないよ」
「…久しぶりかな。平次って呼ばれたの」

確かに。いつも先生って呼んでたから。