救急車の中で、自分はさっきのことを思い出していた。

先生に呼ばれる前に、持田先生と争っていた。

ライブが終わり、タクシーに乗って溝川の家近くに降りて向かっていると、持田先生が現れた。

「あなたの娘のせいで…計画がパァよ」

意味不明なことを言ってきた。けど、美依が何をしたか分かった。きっと、何かやらかしたね。

さすが自分の娘だよ。共通点が見つかったね。

「馬鹿げた復讐ですね。そんなことで自分自身を犠牲にする気ですか?」

「覚悟してるわ」

…馬鹿げてる。犠牲にしてまで、先生が欲しい?
この人は、犯罪者になってでも先生を…
「さっさと離婚してくれない?」

「命令されるのって嫌いなんでね」

あなたに命令されるのは、もっと嫌い。大嫌いだ。
他人に命令されて離婚なんて絶対に嫌。
「そっかぁ…なら」

微笑みながら、包丁を取り出した。
…はぁ。この人って本当に頭いいのかな?同じことの繰り返し。
何度やっても同じことだね。今回は、あなたを警察署に連れてかなきゃね。

「宮沢さん、私ね…あなたが大嫌い」

「同感です。私もあなたが嫌いですよ。要、下がって」

ギターを要に預けて身構えた。
これ以上、傷つけられないように…