「あの人しか…いないの。あの人は、あたしに笑顔で接してくれたのよっ…」

「…」

黙って聞いているしかなかった。

「なのに、あなたに対しては…違う笑顔。おかしいじゃない!それからよ!あなたが嫌いになったのも!」

自分を嫌ってもいい。どんなに嫌ってもいいから…
先生だけは…平次だけは…盗らないで。
「復讐しようって思ったわ。だから、今日…あなたを」

復讐…
こんなにも、この人は小さかった。
恋愛の為だけに自分の人生捨てるだなんて…

自分は、刃のほうを持ったまま立ちすくんでいた。

すると…

―ガチャ―

「ただいまぁ…ってあれ?持田先生?」

先生が帰ってきた。扉の前にいた女の先生…持田先生に気がついた。

持田先生の手には自分の血がついてた。
やば…隠さなきゃ。右手は、血だらけだからズボンのポケットに手を突っ込んだ。

「血?…南?それ…」
左手に持っていた包丁を見る先生。

あ…

「助けてっ!吉田先生!あたし…」

なっ!この先生!
先生が襲われましたみたいな感じ。
襲われたのは自分だよっ!

でも、持っているから言い訳にしか聞こえないだろう。

「南、どうして?」

「…え?」

「どうして、持田先生に…」

持田先生、ケガしてないよ?
ケガしてるのは自分。
しかも、自分を信じてないの?

「南、答えて」

持田先生に抱き着かれながら聞いてくる先生。

やっぱりそうか。