「一度、誘った女の子とは二度と誘わないって主義」

…最低だ。本気で好きになった女の子の気持ちも考えられないあんた、許せない。
へらへらと笑いながら、部屋を見渡していた。

「でも、君なら何度でも誘いたいね」

自分なら?
この馬鹿は…何年経っても変わらないんだね。女をなんだと思ってんだよ。

「最低最悪。馬鹿じゃないの?」

溝川を睨みつけた。人の気持ちを考えたことないでしょ?
傷つけられた人の痛みさえ、あんたは感じることも出来ない。

自分は、殴ってやろうと腕を上げた…

すると、いきなり扉が開いた。
…誰?

後ろを振り返ると…女の人だ。
溝川の女?こんな所まで連れてきたのか。

「宮沢さんね…やっぱり」

「どちらさま?」

「覚えてない?あなたが高校の時の保健医だった」

保健医?そういえば先生ともう一人いたような。

あ…先生とキスしてた…小太りの女の先生。

嫌な思い出だ。けど、今更そんなことを掘り返しても仕方ない。

「…あの人と、やっとまた会えたのに」

バッグから何かを取り出そうとしている。

手には包丁。
…危ない気がする。けど、手が震えてる。これなら大丈夫…かな。

「好きだったのよ?何年も…」

じりじりと近づいてくる元先生。
どうする?この場合…

「先生」

「うるさいっ!」

勢いよく走ってきた。