「ただいま」

「あ、おかえり」

美依が、ひょっこり出てきた。
…溝川、反応するかな。
絶対するよね。
顔を見ると、うわぁって感じでニヤニヤしていた。

「可愛いね!娘さん?」

「そーですけど」

「へぇ…似てないね」
似てない。

…だね。化粧も中学の頃から始めた美依。自分は、大人になって何回かしたことがある…

結婚式の時と、旅行の時。
あの時は早く顔を洗いたかった。

「誰ですか?」

「宮沢さんの彼氏」

はぁ?彼氏?
あんたみたいな奴、お断りだよ。

「宮沢?…ああ、お母さんか」

「今は、なんて苗字?」

「吉田ですけど」

へぇって顔をした。何か言いたそう。
まぁ、教師だし…

「あ、お邪魔します」
本当に邪魔だよ。とっとと帰ってよ。
大嫌いな奴が、傍にいるとイライラするんだよね。
溝川がリビングの扉を開けて、ソファーにどっかりと座った。

図々しいな。なんて奴なの。

「ねぇ、ご主人まだ帰ってこないの?」

馬鹿にしてるの?
それとも嫌味?
そっちがその気なら…こっちだって。

「彼女達、あなたのお誘い待ってるんじゃないんですか?」