「南、よく聞いて。今はね、辛くないんだ。昔は皆がいなかったから辛くて苦しかった」


この旅行も昔なら出来なかった。忙しくて、隆幸や平次…『家族の時間』を最優先出来なかった。


「…話聞いてくれる?」

「はい」

近くにあったベンチに座って、南の肩に頭を乗せた。


「私は一人っ子だから吉田家の跡を継がなきゃいけなかった。小さい頃から経済のこととか学んできたんだ」


昔を思い出しながら、ひとつひとつ話をした。


「二十歳のとき、吉田家を継いだんだけど…上手くいかなかった。失敗ばかりして何もかも失いかけた」


…ずっと失敗して、よく怒られたっけ。