南は険しい顔をしていた。
それは皆分かっていたはず。

僕はその夜、ベッドの中で南を抱きしめた。

「何かあった?」


「何もないよ」


そう言って南は僕の胸に顔をくっつけた。
南の頭を撫でてキスをした。南の顔は高校生の時と同じような寂しい顔をしていたから、僕は焦った。


何か悲しいことでもあったのだろうか?電話でも様子が違った。

「抱いていい?」


「ダメって言ったら?」

南は小さく微笑んだ。さっきの寂しい顔じゃなくなった。


「拒否権はないよっ」

南は笑った。
一瞬でもいい。悲しいことを考えずに一瞬だけでも笑ってほしい。