嘘かもしれない。
この人は嘘が得意な人だ。

《嘘じゃないんですよ?証拠もありますし。他の女を自分の家で…》

嘘だろ…
吉田先生がそんなこと出来るはずない。
俺は愕然とした。

《ねぇ、木田先生。宮沢さんを慰めなきゃ》

甘い言葉に俺は戸惑った。俺は…俺は…
《早くしなきゃ》

「…っ分かりました」
なんで俺は頷いてしまったんだろう。
馬鹿だ、俺。

宮沢、俺…どうしたらいい?

携帯を床に落としてビールを飲み干した。

「宮沢…」

昔、俺は宮沢を傷つけた。最低なことをして悲しませた。

なのに…あいつは俺を許した。
なんでだ?許さなくていい。俺は犯罪者だよ。


あいつは変わらずに俺に話しかけてきた。何もなかったように。

宮沢のことがもっと好きになった。でも俺は分かっていた。

宮沢は俺を選ばないだろうって。