「…要、携帯取って」
テーブルに置いてある携帯を要に取ってもらった。

誰だろう。知らない番号から電話がかかってきた。

「もしもし?」

《宮沢南…さんですか?》

「…そうですけど」

怪しい。何故、結婚前の姓を知ってる?

低くて丁寧な言い方に不安を感じた。


《私は赤城と申します。実は突然なんですが…あなたに伝えたいことがありまして》

「何でしょう」

《はっきり言わせてもらいます。好きなんです、あなたが》


…もしかして?
この人が溝川が言ってたヤクザなのだろうか?

「失礼ですが、ご職業は?」

《お恥ずかしいんですが…ヤクザの組長を》

やっぱりこの人か。だけど、ヤクザという気がしない。

でも作戦なのか?
おびき出すつもりか?

ベランダに出て、空を見上げた。

《お会いしたいんですが》

話をとんとん進める赤城とかいう男。
勝手じゃない?

「すみませんが、どなたからこの番号を?」

《さぁ?ただ電話で、あんたの好きな人の番号を教えてあげるよって…若い男のようでした》

…やられた。溝川め。
何を考えている?