「俺がどんな思いでお前をここに連れて来たか分かるか?
お前が事故で記憶を失ったと知ったとき、どんなに辛かったか。
絶対にお前には記憶を失ったままにはして欲しくなかった。
だから、俺がお前をどんなことをしてでも自分を取り戻させると、誓ったんだよ」

――信じろ。

彼の眼はそう言っていた。

夏実は頷いた。

二人は手を繋ぎ、夏実は仁志の肩にもたれた。

そしてあの時もこうしていたことを思い出した。