「香さん、謝らないで。ゆっくり時間をかけていこう」
「そうね。初樹なら、きっとわかってくれるわよね。あの子、お父さんっ子だったから……」
レストランに入ると、ボーイさんに出迎えられ、ママとすぐに目が合った。
「……初樹!」
ママは私を見て、驚いていた。
天井には豪華なシャンデリア。
気品さがにじみでている、お客さんたち。
私はまわりを見ながら、ママと西園寺さんの前に立った。
ママは、ほんとに映画のスクリーンから出てきたような貴婦人で、西園寺さんはまるで執事のような感じだった。
ふたりのテーブルには、コーヒーカップだけで、食事した形跡はなかった。