名無しさんは、呼吸をととのえると言った。
「いいか? おまえは、ここに来たときと同じように、俺を追いかけるんだ」
私はうなずくと言った。
「わかったわ。でも、命の保証はあるの?」
すると、名無しさんはカイをちらりと見ると、こう言った。
「クククッ! そこの兄ちゃんが、なんとかしてくれるさ」
…カイが、なんとか?
私はきょとんとしてカイを見ると、カイの腕がスッと伸びてきた。
ふわっと優しく包み込まれ、カイの鼓動を耳にする。
私と同じくらい、ドクン、ドクン…と高鳴っていた。
そんななか、ムードをぶち壊すかのように、名無しさんが言った。
「おい、早くしろっ。前にも言ったが、俺は気まぐれ屋だ。俺の気が変わる前に早く帰るぞっ!」