名無しさんは、息をつくと言った。

 「俺がつけた黒星は、おまえの父親の死と引き換えに消えたが、おまえも知ってのとおり、代償として記憶をもらうことになっている」





 私は息をのんだ。



 パパやカイと過ごした記憶は、絶対に失いたくない!!


 せっかく取り戻した記憶や、今までの記憶も、全部失いたくない!!




 私にとっては、どれも素敵な思い出だから。





 名無しさんは、しっぽをフリフリすると言った。

 「そう言われてもな、これは決まりだから…。あ、この記憶なんてどうだろう?」






 …なに?


 私は目をぱちくりさせた。






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