名無しさんが言った。

 「さて、もうそろそろタイムリミットだ。まさか、おまえを5年後に戻すことになろうとはな…」




 私は腕を組むと言った。

 「ちゃんと戻してよね? またふざけたことすると、あなたの首しめてやるんだから。もう姿は消せないんでしょうけど」




 「クッ! 嫌な女だぜ。おまえをここに連れてくるのは、いとも簡単だったのによ。まさか、こんな結果になろうとは…」



 「魔力を取り戻す方法は、ほかにないの?」



 「さあな。一度きりのチャンスだったからな。俺は、ずっとおまえを探していたんだぜ。父親の死と引き換えに、黒星が消えちまったからな。あきらめかけていたところに、おまえが現れたってわけさ」



 「ふうん」





 隣で、カイが目を丸くして聞いていた。


 もちろん、カイには名無しさんの姿や声は聞こえないけど。