幻?




 そうよ、これも名無しさんが作った幻なんだわっ!!


 そう思った瞬間、私もカイも青白い手から解放された。





 パパは、チョコの体をさすりながら言った。

 「チョコは寝ちゃったようだね。まったく心配かけさせて…」




 そうか、カイはともかく、パパにはなにが起きているのか、さっぱりわからないんだよね。




 …でも、よかった。


 チョコが無事で。





 パパは、私を見ると言った。

 「…でも、今の幻といい、さっきの幻といい、一体なんなんだい?」





 私は息をのんだ。


 パパに真実を打ち明けるべきなのかもしれない、そう思ったときだった。




 「…は、初樹っ!」

と、チョコをなでるパパの手がとまると、道路の方向に走っていく、11歳の私に向かって叫んだ。