「えっ? ちょっとまって…!」
と、私は慌てて手を伸ばすが、スルリと交わされてしまった。
まるで、不気味な鈴の音に導かれるように歩いて行く、11歳の私。
《クククッ!》
と、名無しさんの笑い声が頭の中に響く。
「はっちゃん、ダメ! 行っちゃダメッ!!」
と、私がそう叫んだとき、非常事態だと悟ったカイが、サッと手を伸ばした。
「初樹ちゃんっ!!」
カイが、11歳の私の腕をがっしりとつかんだ瞬間、私はほっと息をついた。
「えっ?」
それは、カイの驚きの声だった。
11歳の私の腕が、肩からスッと抜け、カイの手の中には腕だけが残った。
…腕?
私の…腕っ!?
一瞬時間が止まったかのように、私はぱっと目を見開いたまま、声を出すことができなかった。