私は、11歳の自分の肩に手を置くと言った。
「は、はっちゃん、あのね…、はっちゃんに見えている猫は、普通の猫じゃないのっ!!」
私のその発言を聞いて、パパとカイは顔を見交わすと、きょとんとした顔つきで私を見る。
「はっ…ちゃん?」
私はぞっとした。
11歳の私の視界には、まるで私が入っていないかのようだった。
「はっちゃんっ!!」
と、私は11歳の自分の体を揺さぶったが、相変わらず無表情のままで、うつろな目をしていた。
…これも、名無しさんの力なんだわ。
そう思ったときだった。
「…行かなきゃ」
と、11歳の私はぽつりと言うと、肩に置いてある私の手を振りほどいた。