私も、まわりをゆっくりと見回した。




 名無しさんは、一体どこに行ったの?





 「初樹、そろそろ帰ろう」

と、パパが声をかけたとき、11歳の私はパパの腕の中のチョコに気づく。




 「あ~、いつの間にパパのところにいたの?」

と、11歳の私はそう言うと、チョコの頭をなでる。





 名無しさんはどこ?


 私は神経を張り巡らす。





 そのとき、背筋がこおるような視線とともに、名無しさんの声が頭の中で響いた。

 《クククッ! どこ見てんだよ。ここだよ》