そうか、カイには名無しさんは見えないんだ。


 名無しさんが見えるのは、黒星をつけられた11歳の私と、5年後のあのコである私だけなんだ!!





 11歳の私は、名無しさんをチョコだと思って、いまだに追いかけていた。


 パパは目を細めて、その様子をにこやかに見ている。




 パパの目にも、カイの目にも、名無しさんの姿は映っていない。


 いつ11歳の私が道路に飛び出すのか、私は気が気でなかった。





 そして、突然、11歳の私の前から、名無しさんがスッと消えた。




 「あれ?」

 11歳の私は目を丸くすると、きょろきょろとまわりを見る。