「初樹、どうした?」

と、カイが私の顔をのぞき込んだときだった。





 「あっ! チョコ待ってよっ!!」

と、11歳の私がその黒猫に向かってそう叫んだのだ。





 えっ!?


 11歳の私には、名無しさんがチョコに見えるんだっ!!





 「初樹っ、どうした!?」

と、カイが私の肩をがっしりつかむと言った。




 「私が…、チョコだと思って、名無しさんを追いかけてる…」




 カイは、眉間にしわを寄せるとこう言った。

 「俺にはなにがなんだかさっぱり…。俺の目には、あのコはただ走ってるだけにしか見えないんだけど…」




 「えっ?」