「初樹、顔色悪いぞ」

と、カイが私の肩に手を置くとそう言った。




 私はカイに、名無しさんとの出来事を言うべきかどうかを迷った。


 しかし、語っている暇はなかった。




 すでに日は暮れ、あの日、胸に刻んだ、あのあかね色の空を見て私は、ゾクッと身震いをした。






 カイが、私の耳元でつぶやいた。

 「大丈夫。万事(ばんじ)うまくいく」




 私は顔をこわばらせながらも、ゆっくりとうなずいた。






 カイがそばにいてくれることが、なによりもうれしかった。