「初樹、どうした?」

と、カイが私の肩に手をのせると言った。




 「えっ?」


 私は目を丸くしてカイを見た。




 「ぼうっと突っ立ってないで、早く下に降りよう」

と言う、カイの視線の先には、5年前の私とパパがいた。





 そうか、カイには名無しさんの姿が見えないんだ。





 そのとき、11歳の私が、私とカイに気がついて、笑顔で手を振った。

 「お兄ちゃん、お姉ちゃん!」




 カイはニコッと笑うと、

 「遅くなってごめんな」

と言って、土手を降りていった。