《…クククッ!》

 突然、名無しさんの笑い声が頭の中に響いた。




 背筋がこおるかと思った。


 名無しさんをおびえるようになったのは、いつからだろう。




 相手は心の中が読めるわけだし、感づかれる前に、平気を装(よそお)っておかないと…





 《クククッ。大人しく見物させてもらってたぜ。もしかして、奴はおまえもおまえの父親も救おうとしてるんじゃないのか?》





 えっ?



 「だけど、私…。覚悟を決めたの。運命を受け入れるって」

と、私はきっぱりと言った。





 パパの死をただ黙って見ているのは、ほんとに辛い。


 5年前の私に、また私と同じ思いをさせるのも辛い。


 できれば、あんな辛い思いなんか二度と味わいたくない!