私とバイクのお兄ちゃんが会わなくなったのは、パパが死んでしまってから。
バイクのお兄ちゃんは、どうだかわからないけど、私はあの日を境に、この土手には一度も近づかなかった。
それでも、なぜ、私が今日まで、バイクのお兄ちゃんの存在を忘れていたか…
私にとって、バイクのお兄ちゃんと過ごした時間は、特別だったはずなのに。
なぜ?
「…初樹。おまえ、調子悪いのか?」
と、心配そうに私の顔をのぞき込む、カイ。
「ううん、大丈夫」
と、私はそう言うと、無理に笑顔をつくろってごまかした。
けれども、カイはそれを見透かすような目で、私をじっと見ていた。
カイが口を開いたのは、しばらく経ってからのこと。