パパは私のその表情を見て、なにかを察したらしく、私に声をかけようと口を開いたときだった。


 それを遮(さえぎ)るかのように、国道からバイクが走ってきた。




 ブォ────ンッ!!




 そして、そのバイクが道端に停まった、そのときだった。


 私の耳に、かすかに届いたのは。




 「お兄…ちゃん?」






 えっ?




 私は反射的に、11歳の自分を見た。





 11歳の私が、満面な笑みを浮かべながら、そのバイクの人に手を振っていた。

 「お兄ちゃん」






 お兄ちゃん…て…




 私は、きのう、11歳の自分が言っていたことを思い出した。



 ───よくここで寝てる人。チョコもね、そのお兄ちゃんのこと、好きなんだよ───





 ここでよく寝ていて、パパと私以外にチョコがなついていた人…