「どうしたんだい、顔色が悪いけど…」

と、パパが心配そうに私の顔をのぞく。




 「い、いえ、なんでもないんです…」

と、私はそう言いながら、再び涙を流した。





 パパを失いたくない。


 パパを失うくらいなら、私が…





 なんで?


 なんで、なんで、パパなの?





 そのとき、私の頭の中で、名無しさんが嘲笑(あざわら)うかのように、声高らかに笑っていたような気がした。







 私はぎゅっとパパに抱きつくと、自分でも知らず知らずのうちに、こう口走っていた。

 「パパッ!!」





 そして、パパはいつものように、私の頭を優しくなでてくれた。





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