11歳の私を、もう一人の私が、どこかで見ているという、不思議な夢だった。






 11歳の私が、あの土手の青々と茂る草むらの中で、チョコとじゃれあっているときだった。





 ブォ────ンッ!!





 バイクの音が聞こえてくると、11歳の私はすくっと立ち上がって、だれかを待っているかのようだった。




 道端にバイクが停まると、背の高い男の人が土手を降りてきた。





 11歳の私は、その人の顔を見ると、にっこり笑い、

 『お兄ちゃん』

と言って、その人に手を振る。




 その人も、にっこりと笑うが、私にはその人の顔がぼんやりと、ぼやけていてはっきりと見えない。





 『チョコ!』

と、その人がそう呼びかけると、チョコは元気よく、その人のもとへ駆けていった。