猫さん…………。




 「……しかたないか」

 あきらめて帰ろうとしたそのとき、あの猫が横断歩道を渡って向こう側に行こうとしているのを見つけた。

 なんだか宝物を見つけたかのようにうれしくなり、私はばっと駆け出した。


 チカチカと、信号が点滅し始める。

 私はそれでも猫がどこに行くのかが知りたくて、人込みをかき分けて、横断歩道へと飛び込んだ。

 すると、私という存在に気づいた猫が、私から逃げるかのように小走りする。


 「……ちょっ、ちょっとまっ────……!」



 プップッ──────!!!



 クラクションの音とともに、大型トラックが飛び込んできた。

 トラックの急ブレーキ音が鳴り響くなか、私はその場でギュッと目をつぶった。