《クククッ。知ってるさ。おまえだって知ってるだろ? 俺が、人の記憶をのぞくことが出来るってことを》
私は思い出した。
名無しさんの額におでこをくっつけて、名無しさんが私の記憶をのぞいていたことを。
《俺は事故直後に、奴の記憶をのぞいてみた。奴はあの日の昼、どうやら、あの女と駅で待ち合わせをしていたようだ。あの女、時間にはうるさかったみたいでね。奴は、大事な日に寝坊しちまったんだよ。バイクを走らせ、信号が黄色から赤に変わろうとした瞬間だった。奴は、そのまま交差点を突っ走ったのさ。結果、奴は、横からきたトラックに当たったってわけさ》
私はゾクッとした。
カイには、そんなことが…
ねぇ、“大事な日”って?