そんななか、ミナミさんは、
「あらら~、私しらな~い」
と言うと、鼻歌をうたいながら、洗面所へと向かう。
えぇっ!?
行っちゃうのっ!?
「じゃ、そのコだれっ!? また浮気っ!?」
と、彼女が私に指さして言う。
う、浮気っ!?
しかも…、またって…
「えっ、ちがう。ちがうよ、沙織ちゃんっ! こんな奴しらねぇーし…っ!!」
カイの彼女は、ぱっと手を振りかざすと、
「サイテーッ!!」
と、その手がカイの頬に降り下ろされた。
バシッ!!
うわっ!!
私は目をふさいだ。
《…ありゃ、痛いだろうなぁ…》
頭の中で響く、なつかしい声。