「あっ、まって! ……あれ? 確かに、こっちへ行ったはずなのに……」

 足を止めて、ぐるりと辺りを見回す。


 あの猫は、どこに行ってしまったんだろう……。


 たくさんの人が、私の前を通り過ぎる。

 まるで、スローモーションのように、行き来する人たちの会話がどんどん耳に流れてくる。