私は呼吸をととのえると、玄関の押しボタンの手前まで指を運んだ。





 うわぁ…、ダメだ。


 押せない。




 私は指を引っ込めた。






 よし、次こそはっ!!



 私は意気込むと、押しボタンの上にピタッと指を乗せた。





 押す!


 押す!


 押す!




 押すぅ───っ!!





 汗が、じわじわとにじみ出る。




 こうなったら、《いちにのさん!》で押そう。





 いち、にの、さ…






 「ちょっと、いつになったら押すのよっ!」





 えっ!?





 私はぱっと後ろを向くと、きれいな女の人が立っていた。