パパが、リールリードをはずすと、チョコは元気よく、若葉が青々と茂る草むらの中に駆け出していった。




 この土手沿いの道は、道幅が広く、延々と続いている。


 その先には、国道の道につながり、たまに大型車が通ったりもする。






 ここに来たのは、何年ぶりだろう…





 私はパパを見た。




 パパは、チョコにフリスピーを投げているところだった。






 私は、パパが死んでからは、ここには来られなかった。






 思い出のある場所だし、



 それに、パパはここで…





 血まみれになっていた。





 私は、そのことしか覚えていない。






 11歳の幼い手が、私の手を握った。

 「お姉ちゃん、いっしょに遊ぼう」







 まだこの子は知らない。


 これから起きる、恐ろしくて、悲しい出来事を。







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