「…いきなり、呼び捨てかよ」


 かなりの間があったが、彼は目を細めて笑っていた。





 フルフェースのヘルメットだったから、カイの表情はよくわからなかったけど…



 ここに来て、カイが初めて私に笑ってくれた。






 うれしかった。


 カイの笑顔を、もう一度見ることができて…






 カイが、バイクのエンジンをかけたとき、本当に永遠のお別れなんだと思った。


 今にでも泣き出すんじゃないかと思うくらい、私は必死にこらえた。





 「じゃあな。もう会うことはないと思うけど」

と、カイはそう言って、私の前から去っていった。






 私は、カイが見えなくなるまで見送った。





 もう会うこともない、カイの生きている姿を目に焼き付けておきたかった。








◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆