「…いきなり、呼び捨てかよ」
かなりの間があったが、彼は目を細めて笑っていた。
フルフェースのヘルメットだったから、カイの表情はよくわからなかったけど…
ここに来て、カイが初めて私に笑ってくれた。
うれしかった。
カイの笑顔を、もう一度見ることができて…
カイが、バイクのエンジンをかけたとき、本当に永遠のお別れなんだと思った。
今にでも泣き出すんじゃないかと思うくらい、私は必死にこらえた。
「じゃあな。もう会うことはないと思うけど」
と、カイはそう言って、私の前から去っていった。
私は、カイが見えなくなるまで見送った。
もう会うこともない、カイの生きている姿を目に焼き付けておきたかった。
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