私は固定電話の前で、息をととのえた。 手を伸ばし、受話器を耳元にあて、震える指先で、1つずつ丁寧に番号を押した。 どうしよう… ちゃんと、言えるかな。 ツルルルル────… なかなか出ないな。 私は、ちらりと掛け時計を見る。 8時20分。 まだ、いるはずなんだけどな… ツルルルル────… 『…もしもし──…』 出たのは、男の人の声だった。 えっ!? ガチャンッ!! 私は、慌てて受話器を置いた。