私は、ゆっくりと固定電話に手を伸ばす。




 ママに謝ろう。


 …きのうは、ごめんなさいって。





 受話器をつかんだ、そのときだった。


 ドタバタと、階段を駆け降りてくる音が聞こえたのは。




 私は受話器をぱっと離した。


 そして、リビングのドアが勢いよく開くと、ずかずかとカイ似の男が入ってきた。




 ベージュのサファリシャツにデニムパンツ。


 さっきまで、白無地のTシャツだったのに。





 彼は、私に視線を向けると、こう言った。

 「じゃ、そろそろ行こうか?」






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