たとえばそれが
掌から零れ落ちた憎しみであったとて
誰がそれに気付くだろう
たとえばそれが
頬を伝い消えた悲しみであったとて
誰がそれを拭うだろう
気付けば山のように積もって足下を覆い尽くす日常は
私の身体を動けなくした
未来(マエ)にも
過去(ウシロ)にも脅え
今(ココ)から踏み出せない私は
ただアナタの掌を求めた
だのに
アナタが差し出したのは
上辺だけの微笑み
たとえばそれが
一瞬の過ちだったとて
私はそれを咎められるだろうか
たとえばそれが
ほんの戯れのひとことだったとて
アナタはそれを悔やむのだろうか
きっかけはただ
水面に落ちた一枚の花弁が描く小さな波紋
それを止める術を
私達が持たないだけ
いつか誰かがそれを責めるのであろうか
たとえばそれが……
《たとえばそれが》