10時を回る頃、凜が僕のうちのインターフォンを鳴らした。




「おかえり」



優しい笑顔で凜を出迎えた。



「ただいま」






何も話し出さない凜に僕は優しく言葉をかけた。



「今日さ、駅で年配の夫婦を見てさ…知ってる?今年の春くらいにあった列車事故、あの事故の被害者の遺族の人らしいんだ」

「うん…」

「僕さ、あの事故をね、テレビで見てたんだよ。でも、こんな近くの駅での事故だったのに、全く気にも止めなかったんだ。」

「うん…」

「でも、今日思った。その事故…本当に悲しい事故だったんだって……でもね、そういう気持ちになれたのは……」