「ここから先は…秀五殿たちが安心して生きる、民のための明るい未来を作るのがお主の役目。これは別の意味でも厳しい戦いになる。分かるか?」
「はいっ」
「ならば、立派に生き抜いて見せよ。」
「はい。でも…おいらどうしたらいいか…」
「今から、私の屋敷にいる佐助というものを頼るがよい。」
「佐助様…」
「そうだ。常篤がくれぐれも頼む、と言っていたと伝えれば良い。そして私の代わりに松代藩を守るために日々精進してくれよ。」
「おいらが常篤様の代わりに…」
少年の目に光が宿る。
「そう。その目だ。それでこそ秀五殿だ。」
そういうと常篤はまた城下を歩きはじめた。
その常篤の後ろ姿を少年は涙をこらえながらいつまでもいつまでも見送っていた。
(もう、泣いちゃいけないんだ。常篤様の代わりに心も身体も強くならなくちゃ!)
この秀五もまた、後の明治維新において活躍する人物になるのであるが、彼が白桜の伝承者として、京で人斬りと恐れられた新選組と剣を交えるのは、まだもう少し先の話となる。