そのかいあってか、晴香は随分トーンダウンしてきた。


多分晴香は『落ち着いて』という言葉によって落ち着いたのではなく、美菜の繰り返す声によって落ち着いたのだろう。


しかし、美菜にはどちらでも良かった。


それよりも、弘と叶が候補生に申し込みをするという方が、何十倍も重要だった。


晴香は弘たちから詳しい事情を聞けないまま、頭に血がのぼった勢いで美菜に電話をしてきたらしい。


二人にやめさせる突破口は、どんなに話し込んでも、思いつかなかった。


美菜は晴香としばらく弘たちのことについて話し、晴香の気が済んだところで静かに電話を切った。


弘たちのことが気にかかったが、晴香以上に事情をきける自信はない。


晴香は恋人といとこという関係だが、美菜は友人。


美菜よりも晴香の方が、断然近い場所にいるのは明らかだった。